【歴史シリーズ】「天神」の名前の由来。九州一の繁華街が生まれた流れをまとめて紹介。

九州一の繁華街と呼ばれる天神。住みたい街ランキングには常に上位にランクインし、国内外を問わず、多くの人々が訪れる人気の街です。この天神の街がいかにして発展してきたのか、天神の名前の由来やどのような経緯を経て今があるのかを振り返りながら、歴史や魅力を紐解いていきます。

天神とはどんなところ?

福岡県福岡市の中央区に位置する九州最大の繁華街・天神。地下には天神地下街が広がり、大丸や三越、岩田屋などの老舗百貨店や若年層にも人気の商業施設、老舗商店街の新天町に家電量販店、ディスカウントストア、スーパーなど何でも揃う利便性の高さと交通アクセス抜群の環境です。かといって商業施設やオフィスビルだけでなく、天神中央公園や須崎公園、警固公園など、都会の中にも緑の多い場所が用意されています。

そして何といっても、新鮮食材を使用した美味しい店が集中している事も天神エリアの人気の理由の1つです。コロナで一時期は大変な時期を迎えた飲食店業界も元気に稼働しています。きっと転んでもタダでは起きない福岡魂で、ピンチはチャンスと新たな波に乗っていけるでしょう。

また、現在進行中の再開発プロジェクト「天神ビッグバン」で、街は大変革の真っ最中。2026年までに約70棟のビルが建て替わるといわれています。

天神の地名の由来とは?

天神という名前が使われるようになったのは、江戸時代に太宰府に左遷された天神様(菅原道真公)を祀る「水鏡天満宮」に由来しているそうです。「天神」とは菅原道真公のことを指します。道真公は没後すぐ、天満大自在天神(てんまんだいじざいてんじん)という神格で祀られた為、水鏡天満宮のある一帯を「天神」と呼ぶようになったといわれています。

右大臣にまで出世したにもかかわらず、あらぬ疑いをかけられて大宰府に左遷されてしまった道真公が四十川(現在の薬院新川)を水鏡にして、川面に映る自分のやつれた姿に落胆し悲しまれたという場所に建てられたのが「水鏡天神」(当時は今泉にあった)です。その後、江戸時代の1612年、福岡藩初代藩主・黒田長政が福岡城の鬼門にあたる現在の地に移転させ、「水鏡天満宮」となったといわれています。

400年前から愛される「水鏡天満宮」

いわば「天神のど真ん中」に鎮座する水鏡天満宮は、天神駅16番出口から徒歩2分の天神1丁目(アクロス福岡の前)に位置しています。朱塗りの美しい社殿が印象的で、池には大きな鯉が泳いでいる神社です。

この地に移ってきてから400年という歳月が経っていますが、現在も鬼門を守護する守り神として多くの人々から崇敬されています。主に、合格祈願や立身出世、厄除けなどのご利益が有名。境内では、神の使いといわれる猫たちにも会えるようです。

江戸時代から続く、天神の歴史を紐解く

知っているようで、長く住んでいる地元の人でも知らない街の歴史。天神は江戸時代から誕生したことが分かりましたが、その後の変遷については興味深いところです。それでは天神の歴史について見ていきましょう。

城下町として発展した天神(福岡)と博多商人の町・博多

「福岡市」だっけ?「博多市」だっけ?と他県の方はよく混同されます。結論からいうと「福岡市博多区」はありますが「博多市」はありません。このようになったのは複雑な経緯があります。

そもそも、「福岡」も「博多」も古くから実際に呼ばれていた地名です。福岡城の城下町として発展してきた天神を含む福岡エリアと、古代から港町として発展し、中世以降は博多商人の町として発展してきた博多エリア。その境界線は那珂川を挟んで東西に分かれ、ちょうど中洲あたりから「博多」となります。

この二つのエリアは歴史も性格的にも全く異なります。博多の町の人達は良くも悪くも商人気質で人懐っこく、祭好き。陽気な人が多いです。福岡エリアは概して保守的な人が多め。とはいえ、古来、外国人を多く受け入れてきた土地柄もあってか、転勤などでよそから来た人を受け入れる傾向はあります。

福岡エリアと博多エリアは昔から競い合うように発展してきました。元々あまり仲の良くなかった両者ですが、明治時代の廃藩置県の際には、福岡市にするのか博多市にするのかでかなり揉めたようです。

投票の結果、わずか1票差で「福岡市」に決定。那珂川を境に商人の町・博多と、武士の町・福岡に分かれたといいます。その代わり当時できたばかりの駅名と新幹線の駅は「博多駅」となりました。

明治初期から大正にかけての天神の変遷

明治維新で明治時代に入ると、武家屋敷から人がいなくなり、スラム化した天神町に県庁や市役所、警察署などの官公庁が設置され、官庁街となります。天神町に居を構えていた藩士の屋敷跡には教育施設や鉱山監督署が設置され、伊藤伝右衛門など筑豊の炭鉱主たちも邸宅や別邸をこの地に構えるようになったといわれています。

1979年(昭和54年)まで走っていた路面電車の前身・福博電気軌道は、1910年(明治43年)、「九州沖縄八県連合共進会」という博覧会を機に路面電車を明治通りに開通。翌年には博多電気軌道も開通し、天神には2路線の路面電車が運行するようになって福岡と博多の人の往来が活性化し、これにより天神町界隈が発展するようになりました。

明治から大正にかけては、天神町一帯に次々と学校が開校し、文教地区の側面も見せるように。1914年(大正3年)には、天神町で「明治記念博覧会」が、1920(大正9)年には「福岡工業博覧会」が開催され、街がさらに発展していきます。

昭和初期から戦後の復興期

大正期から昭和初期にかけて、九州鉄道(現在の西鉄大牟田線)福岡駅や松屋百貨店、岩田屋百貨店などが天神で次々に開業。新聞社や放送局なども集まってきました。1927年(昭和2年)には、福岡市で初めてのバスが西公園-博多・箱崎間で運行を開始します。

1945年(昭和20年)、福岡は6月の大空襲で焼け野原になりますが、翌年の1946年(昭和21年)10月には商店街の「新天町」が早くも完成。これを皮切りに天神周辺には次々とビルが増えていきます。

1964年には、6月15日の町名町界整理によって、「天神町」から「天神」となり、隣接する因幡町(現在の天神2丁目)や鍛冶町(現在の天神3丁目)なども含めて現在の天神地区が確立しました。1971年(昭和46年)には「ダイエーショッパーズ福岡店」が開業。1975年(昭和50年)に市内の路面電車(呉服町線・城南線)の廃止が決定し、それに伴って「博多大丸」が呉服町から天神の現在地に移転。

翌年には、天神地下街が開業し、「天神コア」や「ニチイ天神店(ビブレの前身)」も開店。天神のビルに銀行や商社などが進出し、”九州一の繁華街”へと発展していきます。

そして現在進行中の再開発プロジェクト「天神ビッグバン」が2015年から本格始動し、福岡市民には馴染み深い福岡ビルや天神コア、天神ビブレ、天神イムズが閉館。2021年に「天神ビジネスセンター」が完成しており、プロジェクトは2026年に終了予定です。

天神が多くの人から選ばれている理由

空襲で焦土と化した天神が戦後見事に復興を遂げ、”九州一の繁華街”になり、多くの人々から選ばれている理由は、何でしょうか?次は天神が選ばれる理由について見ていきましょう。

都市と自然のバランスが良く、コンパクトにまとまっている

天神が選ばれる理由の1つは、福岡の街が持つバランスの良さやコンパクトさにあるといえます。天神からの通勤時間は30分未満の割合が多く、職場までの通勤が楽な点は大きいです。加えて、生活コストで見ると、福岡市自体が物価の安い土地である為、天神という家賃相場は高めであっても、他の大都市と比較するとコスパは非常に高いといえます。

ショッピング施設や飲食店の充実度が高く、医療機関も揃っており、公共施設も充実。オフィスビルに囲まれた街でありながら、都市公園など自然環境も豊かで、都市の利便性と自然環境とのバランスがとれており、狭いエリアにコンパクトにまとまっていることが大きいでしょう。天神から車で40分〜50分もあれば、二見ヶ浦のような美しい景勝地や海の中道海浜公園などのレジャー施設にも足を伸ばすことができます。

コスパの高さと衣・食・住に恵まれた環境

天神といえば福岡市の最先端を行く街。3つの老舗デパートに加え、パルコやソラリアステージ、LOFTなどの商業施設、天神地下街や新天町といった商店街があり、買い物施設が充実。また、グルメ天国・福岡の中心として安くて美味しい店が集中しています。

夕方18時ぐらいからは、屋台も出店し、福岡の美味しいものを堪能できます。家賃が安く物件数も多いので、住環境も抜群です。天神に職場があれば、まず出勤のストレスがありません。博多へも自転車で通勤できますし、バスは150円均一区間。交通面の利便性とコスパの高さは全国にも誇れるレベルです。

天神のおすすめスポット「アクロス福岡 ステップガーデン」

アクロス福岡 ステップガーデン

この緑を見たら都会の真ん中にいる事を忘れてしまいそうなほどの緑の森。階段状に緑が連なり、滝が流れるステップガーデンは、2015年にはCNN.comの「世界で最も美しい10のスカイガーデン」に選ばれました。

屋上緑化面積は約5,400㎡で、樹種は200種類、50,000本程!この屋上緑化は気温の上昇を抑える効果もあるといわれており、実際に周辺市街地との温度差も15℃もあるのだとか。昨今問題になっている「ヒートアイランド現象」の緩和にも役立っているようです。

土日祝日の10時〜16時のみ(12/31〜1/2を除く)屋上展望台が開放されます。入場料も無料。屋上から見る眺めも格別ですよ

天神様に守られた魅力的な福岡の中心地「天神」

アジアの玄関口・福岡の中心地であり、「天神ビッグバン」で街の大変革の最中にある天神。鬼門を守護する天神様に守られた魅力あふれる街で、毎年「住みたい街ランキング」で上位にランキングされるのも頷けます。今後ますます磨きをかけていく事になりますが、古くからの良さは残しつつ、どう変わっていくのか楽しみですね。

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