渋谷のアート・トイレ巡り。注目集めるオススメ10か所を大特集

著名なクリエイターが手掛けた渋谷区の公衆トイレが、最近話題を集めていることをご存知でしょうか。「THE TOKYO TOILETプロジェクト」と銘打ったこの企画は、建築やアートに興味がある人々を中心に、アート・トイレ巡りとしてブームになっているのです。

今回は、その中でも特にオススメのアート・トイレを10ヶ所ピックアップ。さあ、ステキなアート・トイレを巡る散歩に出かけましょう。

ー 代々木公園エリアをアート・トイレ巡り ー

代々木公園西側のエリアには、3ヶ所アート・トイレが設置されています。東京メトロ千代田線「代々木公園」駅や、ほぼ隣接する小田急小田原線「代々木八幡」駅をスタート地点に、3つのアート・トイレを全て巡ってみましょう。

ー 透明カラーが印象的!「 代々木深町小公園トイレ」ー

東京メトロ千代田線「代々木公園」駅の3番出口を出てすぐ、代々木公園とは代々木通りを挟んで反対側に、代々木深町公園があります。そこには「THE TOKYO TOILETプロジェクト」のお披露目時に、世間に衝撃を与えたトイレがあります。それは…

トイレの内部が丸見えの、壁が透明なトイレです。その名も「ザ トウメイ トウキョウ トイレット」。中が見えてはならないトイレ、それがここまで見えてしまうのですから、世間が驚くのも無理はないでしょう。
※2022年12月時点、透明化を一時的に解除。再開は未定となっています。

このアート・トイレを担当したのは建築家の坂茂氏。トイレの壁が透明なことによりきれいな状態であるか、不審者は潜んでいないかなどの確認を外側からできることを念頭において設計したそうです。

このアート・トイレはぜひ夜にも訪れてほしいです。内側から光が溢れ、まるで行灯のように公園内を照らします。この色使いだと、現代風のスタイリッシュな行灯ですね。夜間でもとても目立つトイレなので、夜でも安心して利用できます。

男子トイレ・女子トイレ・ユニバーサルトイレが設置されています。ユニバーサルトイレ内には障害者用トイレやオストメイトも設置。ベビーシートやベビーチェアもあるので、乳幼児連れでも利用しやすいのは嬉しいですね。

ー 双子のトイレ?「はるのおがわコミュニティパークトイレ」 ー

代々木深町小公園から代々木通りを更に北上して5分ほど歩くと、左手には「はるのおがわコミュニティパーク」があります。ふと公園内を見ると既視感のあるトイレが…

あれ?代々木深町小公園のアート・トイレに似ている!?そうなんです。実はこちらも、代々木深町小公園と同様、建築家の坂茂氏が手掛けています。こちらのアート・トイレも、内側から鍵をかけると中が見えなくなる仕組みを採用しています。

男女それぞれのトイレやユニバーサルトイレが設置されています。ユニバーサルトイレ内には車いす用の設備やオストメイト設備もあるので、障害のある方も利用しやすいのがポイント。ベビーチェアやベビーシートもこちらのトイレにも設置されていますよ。この公園の隣には「はるのおがわプレーパーク」という子供たちの遊び場があるので、子供や子供連れの方が利用しやすいという点はとてもいいですね。

このそっくりな2つのアート・トイレで最も大きな違いは、夜の佇まいかもしれません。代々木深町小公園のトイレはピンクやオレンジ、紫色を用いており暖色でまとめられています。

一方このはるのおがわコミュニティパークのアート・トイレは、ライトブルー・ライトグリーン・スカイブルーの寒色を採用。夜になりライトアップされると、クールな光を放つ箱のような印象を受けることでしょう。どこか近未来を予感させるような、とてもかっこいい姿です。こちらもぜひ、夜間にも訪れていただけたら…と思います。

それでは次のアート・トイレに行っていましょう。はるのおがわコミュニティパークの代々木通りとは反対側の出入口がスタートです。

ー 森から生えた3本のきのこ「代々木八幡公衆トイレ」 ー

はるのおがわコミュニティパークを出てまっすぐ進むと、小田急小田原線の踏切があります。その踏切を越えて更に進むと、戸建て住宅や低層のマンションが集まる静かな住宅街の中に出ます。そのまま歩いていくと、左手に古い外壁が出現。代々木八幡宮の外壁で、ここはちょうど八幡様の裏手なのです。壁に沿って歩き、山手通りに出てふと左手を見ると、そこにはおとぎの国に迷い込んだような気分になるアート・トイレがありました。

まるできのこのように見えませんか?そうなんです。これは代々木八幡宮の鎮守の森から生えたきのこ、というイメージでつくられたアート・トイレなんです。近くで見てみると、まるで自分が小さな妖精になったような気分になる、大きなきのこそのものです。夜になると、屋根の下の部分から光が漏れて、より幻想的な雰囲気が演出されます。

近くで見てみると、外壁には小さなタイルが張り巡らされています。アースカラーからホワイトに色のグラデーションをつけることで、よりデザイン性をUP。遠くから見ても、近くで見てもそれぞれに面白さが感じられますよ。

それぞれの建物には、男子トイレ・女子トイレ・ユニバーサルトイレが割り当てられています。どのトイレにも手すりやベビーチェアがついているので、高齢者、子供を連れてお出かけしている方、全ての人が利用しやすいです。子供を連れているお父さんも、子供を一人にすることなくトイレを利用できるのは安心ですね。

ー 代々木公園エリアのアート・トイレの特徴 ー

代々木公園エリアのアート・トイレは、「THE TOKYO TOILETプロジェクト」のコンセプトが直感的に伝わりやすいのではないかと思います。「代々木深町小公園トイレ」と「はるのおがわコミュニティパークトイレ」は、それまでの公衆トイレの概念を打ち破りました。

一方、「代々木八幡公衆トイレ」は緑が多いエリアという環境にマッチしたデザインで創り上げ、多くの人が親しみを抱ける造りをしています。代々木八幡宮の周りには昔ながらの住宅街が形成され、子供がいる家庭や高齢者も多く暮らしています。それらの人々が普段の生活の中でも利用しやすいように配慮されているのも、とてもステキですよね。

アート・トイレ巡りをする際には、まずこのエリアを巡るのもいいかもしれません。

ー 「代々木公園」の中にも3本のきのこ? ー

もし「代々木八幡公衆トイレ」を見学した後にお時間に余裕があるならば、ぜひ代々木公園の中に立ち寄っていただきたいスポットがあります。なんとそれは…

こちらも3本のきのこ!噴水とバードサンクチュアリの間にある休憩スペースで、その名も「3本きのこの休憩舎」。なんとなく、代々木八幡公衆トイレとリンクするものを感じて面白いですよね。

渋谷の街にはなかなか代々木公園程の大きな屋外スペースはありませんから、この3本のきのこの下でお茶を飲みながら、まったりと過ごすのもオススメですよ。

ー 恵比寿の街でアート・トイレ巡り ー

恵比寿には4ヶ所アート・トイレがあります。今回はその内の2ヶ所をピックアップ。さっそく見ていきましょう。

ー タコとイカのマリアージュ?「恵比寿東公園公衆トイレ」 ー

アトレ恵比寿1階にあるJR恵比寿駅西口の改札を出て、右手のエリアの散策をしていきましょう。目指すは「恵比寿東公園公衆トイレ」です。恵比寿通りの五差路に出て、「猿田彦珈琲恵比寿本店」と「猿田珈琲恵比寿本店別館」の間の道を進んで行くと、恵比寿東公園が見えてきました。周りはマンションや中層のオフィスビルが多く、恵比寿駅から3分くらいの場所なのにとても静かな場所です。

公園の前にたどり着いてまず目に入ったのは…

不思議な屋根の形のアート・トイレです。なにかに似ているような気も…?ふとその奥に目を移すと

なんと、タコの遊具があります!これはもしかして、タコがいるからイカの形のトイレにしたのでしょうか!?

もともとタコ遊具が大人気で、「タコ公園」と近所の子どもたちに呼ばれていた恵比寿東公園。それを知った建築家・槇文彦氏が、公園の遊具にも馴染むようにこのアート・トイレをデザインしたのだそうです。

表に回り込むと、ますますイカの形に見えてきます。よく建物を観察してみると、屋根の形はただイカのデザインを模しただけではなく、大きな庇の役割も果たしていて、雨の日でもトイレの出入りの時にすぐに濡れないように配慮がされているのが感じられます。

外壁も半透明になっていて、昼間は外の光が内部に入り、夜は内部の光が外に漏れ出て視認性がUPするようになっていました。半透明にすることで、不審者がいないかどうかを外部からチェックできるのも安心ですね。

男子トイレ・女子トイレと、多機能トイレが設置されています。多機能トイレの中には、車いす用の設備やオストメイト設備、ベビーチェアやベビーシートもあるので、様々な人が使いやすいようになっています。中はとても明るくて、気持ちよく利用できるなと思いました。

ー 現代風のスタイリッシュな厠「恵比寿公園トイレ」 ー

さて次は「恵比寿公園」へと向かいましょう。恵比寿東公園を出て北西側の道を進むと、渋谷橋がある通りに出ます。左折してその通り沿いにずっと進み、線路の下を通過してしばらくすると見えるのは恵比寿南交差点。そこを右折してすぐの場所に、「恵比寿公園」があります。恵比寿東公園から徒歩5分少々で着くので、かなり近いです。

それでは恵比寿公園のアート・トイレを見てみましょう。

パッと見た感じでは、公園の中にあるブロンズ像などのアート作品のような雰囲気。この中にトイレがあるとは一見してはわからないです。実はこれは敢えてトイレ感は出さず、遊具や樹木のように公園の中に佇むように作られているのだそうです。この公園自体、大通りの内側のとても静かな環境にあるので、アート・トイレのコンセプトは正にピッタリではないでしょうか。

このアート・トイレを手掛けたのはインテリアデザイナーの片山正通氏。日本のトイレの原点である「川屋(厠)」をコンセプトとしています。15枚のコンクリートの板を、簡単に組み合わせたような形が特徴。そのさり気なさの中にある芸術性が、とても味わい深いですね。夜になると板と板の隙間から内部の光が漏れ出て、昼間のクールな雰囲気から、とても暖かな雰囲気に変わるのも面白いです。

男子トイレ・女子トイレの他に、車椅子設備とオストメイト設備があるユニバーサルトイレが設置されています。ユニバーサルトイレ内には多目的シートもあるので、子供のオムツ替えも可能。ユニバーサルトイレ内ならば、お父さんも赤ちゃんのオムツ替えができますね。女子トイレにはベビーチェアもあるので、子供連れでも安心して利用できます。

ー 恵比寿エリアのアート・トイレの特徴 ー

恵比寿は「恵比寿ガーデンプレイス」があり、渋谷駅や新宿駅も近いためとてもキラキラした都会的な印象が強いです。その一方、とてもカジュアルでレトロ感のあるエリアもアリ。今回取り上げた2つのアート・トイレは、この恵比寿の街のスタイリッシュさとカジュアルをうまくミックスして創り上げているように感じられます。

ー おすすめスポット「東京都写真美術館」 ー

恵比寿で時間に余裕があるならば、ぜひオススメしたい場所があります。それは「東京都写真美術館」です。

恵比寿ガーデンプレイスの中に立地するので、場所はわかりやすいでしょう。東京都写真美術館は、日本初の写真と映像の総合的な美術館として知られています。写真の展示だけではなく、映画の上映もあるのが特徴。アートとして見る写真や映像の世界も、とても奥が深いものだと改めて感じさせられます。

ー 幡ヶ谷エリアのアート・トイレ巡り ー

新宿から京王新線で1駅。自転車だったら、新宿からも渋谷からも気軽にアクセスできる幡ヶ谷。最近、商店街におしゃれな店が増えつつはありますが、基本的にはノスタルジックな住宅街が広がります。さてこの幡ヶ谷には、どのようなアート・トイレがあるのでしょうか。さっそく出発しましょう。

ー 手を使わないトイレ「七号通り公園トイレ」 ー

京王新線幡ヶ谷駅北口を出て、出口を背にして右方向に甲州街道沿いを進みます。1、2分でスーパーマーケット「ライフ」が見えてくるので、その手前の道を右折。そのままバス通りまで直進を続けると、今回の目的地である七号通り公園へたどり着きます。

そこで見えたものでまず印象に残るのは、白い球体です。

そう、これが今回の目的であるアート・トイレの「七号通り公園トイレ」です。マッシュルームのような、かまくらのような、はたまた大福のような、白くて丸いまるでアート作品のような外観。後ろからぱっと見た感じでは、トイレなのかわからないくらいの意表を突くデザインですね。

このアート・トイレの名は「Hi Toilet」。見た目の第一印象から予想したネーミングと、少し異なるかもしれません。この名の由来は、外観ではなくトイレの機能から来ているのです。

実はこのトイレ、ボイスコマンド方式が取られており、例えばトイレの外側から「ハイ、トイレ!ドアを開けて」と言えばドアが開きますし、「ハイ、トイレ!水を流して」と言えば便器の水を流してくれます。手を触れなくても、トイレの一連の動作を行えるのが特徴。

このトイレを担当したのは、クリエイティブディレクターの佐藤カズー氏。元々この機能は、新型コロナウィルス感染症の拡大前から企画されていました。結果として、今となってはかなり時流に即した機能だと言えるでしょう。もちろん、通常の手での操作もこのトイレでは可能。全ての人が等しく利用できるのは、ダイバーシティである渋谷区のトイレならではでしょう。

トイレは、男子トイレと誰でもトイレで構成されています。誰でもトイレには女性用トイレ・障害者用設備・オストメイト設備が設置されています。

風通しのために、外壁の下部が少し開けられています。夜になるとその部分から内側からの光が漏れ出し、まるでアート・トイレ全体が浮き上がっているかのよう。とても幻想的な雰囲気が漂います。

さて、次のアート・トイレに行くために、一旦幡ヶ谷駅へ戻りましょう。

ー 立地を細かく研究したからこの形に「西原一丁目公園トイレ」 ー

幡ヶ谷駅南口が次のスタート地点。駅舎を背にして左方向(新宿方面)に進むと緑道に出ます。この緑道を使った細長い公園が、今回の目的のアート・トイレがある「西原一丁目公園」です。

さっそく「西原一丁目公園トイレ」を見ていきましょう。

外観はパッと見た感じでは、今まで見てきたアート・トイレと比べると、かなりシンプルに感じるかもしれません。でも、現地で見ると受ける印象は少し違います。この細長い公園沿いには、低層のマンションや戸建てなどがぎっちり建ち並んでいる状態。このシンプルな形の四角いトイレは、それらをオマージュしてデザインしたのかな?と感じられます。公園のトイレではありますが、住宅街の空間にすっとフィットしているデザインなのです。

外観こそシンプルなのですが、トイレの中に入るとまた印象が変わります。建物は樹木のシルエットをプリントしたガラス張りで、トイレの中に入ると外の世界観がそのまま続いていて、ナチュラルな雰囲気になるのです。外側も内側も、周囲との世界観に程よく調和しているのだなと感じられます。

夜になると内側からの光が、建物全体から解き放たれ、その周囲一体がとても明るくなります。このトイレのクリエイターである建築家・坂倉竹之助氏は、夜間に光るこのアート・トイレを行灯としての機能を持たせたそうです。人通りが少なくなる夜間帯でも、この公園を通り道にしている人には明るく心強い存在となるでしょう。

トイレの機能面も見ていきましょう。個室が3つ並んでおり、全てが男女兼用のトイレで、中央の個室には障害者用設備とオストメイト設備が設置されています。時間帯によっては、このエリアは男性がとても多いので、待ち時間が少なく済むように敢えて男女兼用の個室に設定。ドアは自動ドアなので、触れずとも出入できるのは便利ですし、なによりもかっこいいですね。

ー 幡ヶ谷エリアのアート・トイレの特徴 ー

デザインのコンセプトとしては、それぞれ個性が際立つ幡ヶ谷エリアのアート・トイレ。しかし機能面では共通部分もありました。それは手を使わずにトイレ内に入れること。感染症対策という観点からも、このなるべく触れずに利用できる点は、これからのトイレに求められる機能かもしれません。

ー 幡ヶ谷のオシャレ化はここから「パドラーズコーヒー」 ー

西原一丁目公園のアート・トイレを見学し、もし休憩したいなと思ったならば、ぜひオススメしたいカフェがあります。それはパドラーズコーヒーです。西原商店街を代々木上原方面に歩いていくと見えてきますよ。

今でもかなり昭和レトロ・平成レトロな雰囲気が漂う幡ヶ谷ですが、この西原商店街はパドラーズコーヒーができて以降、おしゃれなお店が次々開店してきました。パドラーズコーヒーはおしゃれなだけではなく、コーヒーもフードもしっかりものすごく美味しいので、多くの人々から人気を集めているのです。

美味しいコーヒーでホッと一息、いかがですか?

ー 神宮前から松濤へアート・トイレ巡り ー

渋谷のアート・トイレは、2〜4施設がまとまってエリア内にある場合が多いです。でも中には、他とは離れて設置されているアート・トイレもあります。今度は、そのような近くに他のアート・トイレがない箇所をツアーしてみようと思います。

神宮前から松濤まで、アップダウンの激しい約3キロの道のりのお散歩です。お時間と体力のある方は徒歩で、スピーディーに見て回りたい方はレンタルの電動サイクルを利用するとよいでしょう。

ー 懐かしいのに新しい「神宮前公衆トイレ」 ー

東京メトロ副都心線「北参道」駅または「明治神宮前<原宿>」駅がスタート地点。まず目指す「神宮前公衆トイレ」は、明治通り沿いのこの2つの駅の間にあります。北参道駅からは明治通りを南に、明治神宮前駅からは北に向かうと…ジブラルタ生命原宿ビルの側に、なんとなく不思議な建物が見えてきました。

こちらが今回の目的地「神宮前公衆トイレ」。昔懐かしい、まるで一軒家のような外観です。茶色の三角屋根、ミントグリーンの木製サッシ風のレトロなデザイン窓枠、雨樋まであります。これらが真っ白なテクスチャに映えます。周りは今どきの鉄筋コンクリート造のビルばかり。その中にまるで取り残されたかのように、この一軒家風のアート・トイレは建てられているのです。

このアート・トイレを手掛けたのは、ファッションデザイナーでありクリエイティブクリエイターであるNIGO氏。変わりゆく東京の景色の中で変わらないもの、を表現しました。テーマは温故知新。このようなレトロなデザインのものは、ある人にとっては懐かしく、またある人にとっては新鮮に感じられます。

神宮前公衆トイレは、中央にユニバーサルトイレ、左手に男子トイレ、右手に女子トイレがあります。全てのトイレにベビーチェアがあるので、子供を連れていても安心して一緒に入れるのは嬉しいポイント。ユニバーサルトイレには、車いす用の設備やオストメイト設備、ベビーケアシートが完備。

外観と同様、トイレ内も清潔感のあるホワイトで統一され、外からの光が入り開放感がアリ。明るい雰囲気なので入りやすいのがポイントです。

ー 神宮前1丁目→神宮前6丁目 ー

次に向かう「神宮通公園トイレ」は神宮前6丁目にあります。今見てきた「神宮前公衆トイレ」は神宮前1丁目で縦に細長い神宮前の北端、次の神宮通公園トイレは神宮前の南端にあり、1キロ半弱離れた場所にあります。さあ、神宮通公園に向けて出発しましょう。

明治通りを「明治神宮前<原宿>」駅方面へ向かいます。するとすぐに周囲には、ファッション関係のおしゃれな店舗があるエリアに入ります。右手に「竹下通り」「ラフォーレ原宿」を見つつ、明治神宮前駅のある交差点を越え、更に1キロ弱進むと、右手に公園が見えてきます。ここが目的地の「神宮通公園」です。

ー 雨宿りができるトイレ「神宮通公園トイレ」 ー

神宮通り公園のアート・トイレのコンセプトは「雨宿りができるトイレ」。庇が大きくせり出し、急な雨でも庇の下に駆け込めば、ちゃんと雨宿りができるように考えられています。公衆トイレとしてだけではなく、都市機能のひとつとして作られたのが、この神宮通公園トイレです。

このトイレのクリエイターは、建築家の安藤忠雄氏。アート・トイレとしての美しさだけではなく、機能性を重視しているのがこのトイレのポイント。汚れにくく、いたずらされにくいように建物の素材にはアルミを採用。出入り口を2ヶ所設け、トイレ内は通り抜けが可能。風と光を通すために、縦格子を採用。格子の内側に入ると、外から想像するよりもずっと明るい空間が広がります。

細かく機能性が考えられており、それを活かす建築物として見た場合にもとても興味深いアート・トイレです。

男子トイレ・女子トイレ・ユニバーサルトイレが設置されています。ユニバーサルトイレには障害者用トイレやオストメイト設備、ベビーチェア・ベビーケアシートが完備。子供と利用する方は、ユニバーサルトイレを利用するといいでしょう。

ー 神宮前6丁目→松濤 ー

次の目的地は松濤にある「鍋島松濤公園」。明治通りを更に南下していくと、道沿いに並ぶ建物が若者向けの店が多い原宿エリアから、大人向けの店が多い渋谷エリアに入ります。宮益坂下の交差点を右折し、線路の高架の下をくぐり、道玄坂下のY字路を右手に進行。「Bunkamura」を通り抜けると、渋谷屈指の高級住宅街に差し掛かります。変形の交差点を右手に進むと目的地の「鍋島松濤公園」です。

ー 森へ誘われるかのようなデザイン「鍋島松濤公園トイレ」 ー

遊水地を中心に緑が広がる松濤鍋島公園。そんな松濤鍋島公園には、雰囲気にピッタリのアート・トイレが設置されています。

「森へのコミチ」と名付けられたこのアート・トイレ。杉板で覆われた小屋が5つあり、その間を進むとまるで森へ向かっているのかと錯覚するかのよう。周囲の植樹とのバランスも効果的ですよね。特徴的な木材の使い方で、このトイレのクリエイターにピンと来る方も多いかもしれません。そう、木材をデザインとして効果的に用いた建築に定評のある建築家・隈研吾氏が松濤鍋島公園のアート・トイレを担当しました。

小屋は5つありますが、そのうち4つがトイレでもう1つは防災倉庫。防災倉庫もアート・トイレのデザインにすることで、その一帯がよりアートとして統一感が高くなりました。

トイレは誰でもトイレ・小便器ブース・一般トイレ(身だしなみ配慮ブース)・幼児用トイレで構成。誰でもトイレには障害者用設備やオストメイト設備、ベビーチェア・ベビーケアシートが完備されています。

トイレ内は木材の端材を利用して、壁にデコレーションが施されています。外側からの世界観が、そのまま内部にも続いており、木材の美しさをより身近に感じられるでしょう。

ー 手で見る美術館「ギャラリーTOM」 ー

高級住宅街である松濤エリアには「渋谷区立松濤美術館」や「戸栗美術館」など、実は美術館が多くあります。もしお時間に余裕があるならば、その中でもコンセプトが際立つステキな美術館に立ち寄るのはいかがでしょうか。鍋島松濤公園の道を挟んですぐ向かい側にある「ギャラリーTOM」です。

こちらは視聴覚障害の方が楽しめる私設の美術館。「手で見る」をコンセプトに、実際に彫刻などの芸術作品に触って、作品を感じることができるのです。視聴覚障害の方だけではなく、すべての人が楽しめる場所なので、実際に作品に触れてみたい!と思っていた方にはとても興味深いのではないでしょうか。親切なスタッフさんばかりで、作品の解説も詳しくしてもらえますよ。

ー さあ、渋谷のアート・トイレ巡りにでかけよう ー

いかがでしたでしょうか。今回は話題の渋谷アート・トイレを10ヶ所ピックアップしてお届けしました。どのアート・トイレもそれぞれにオリジナリティが際立ち、または周辺の風景に溶け込み、見ているだけでもとても楽しいものばかりでした。

光の使い方、光の見せ方も凝ったものが多くあります。昼と夜では全く雰囲気が変わりますので、ぜひ昼間だけではなく夜間も見てみたいものですね。

今回は10ヶ所のみの訪問でしたが、今回は訪れなかった場所やこれから更に設置される予定のアート・トイレもあります。ぜひそれらのアート・トイレへも訪れてみてください。

この記事を書いた人

千葉みなと

フリーランス歴15年以上の40代ライター。大学生と高校生の一男一女の母。東京在住。
子どもの手が離れつつあり、今では自分の時間を満喫しています。趣味は散歩、乗り鉄、料理、スポーツ観戦、謎解きイベント参戦。夏は野球(プロアマ問わず)、冬はラグビーを観戦。
青春18きっぷが発売されている期間は、あちこちの列車に乗りに行っています。お気に入りの路線は、JR大糸線・木次線・水郡線など。山越えの列車にロマンを感じています。